『ショート&ナロー』
1994年、カナダのホテルの一室で「日本向け新型クラスC開発」に向けた
コンセプトについて戸川さんと話し合ったことを覚えています。
話し合ったと言っても、その時の私は、戸川さんの頭の中から創造され湧き上がって
くる「発想」をメモに書き留めるのが精一杯だったように記憶しています。
「こんなモーターホームができたら凄い事になる・・・」
ワクワク、ドキドキしながら時間も忘れて「夢中」になった一時でした。
戸川さんの創造や発想は、1つ1つの「点」で数えられるような簡単なものでは
なく、敢えて表現するなら「面で表現される創造」とでも言えばよいのでしょう
か?あるいは、1つの「音」ではなく「和音」として表現されているとでも言え
ば分かり易いかも知れません。音楽の世界で言えば「絶対音階」に近い能力でも
持ち合わせていなければ「メモするだけでも至難の業」なのです。
つまり、現時点までに体験した事象しか理解できない「凡人」には、戸川さんが
発する「将来・未来」の話しが頭の中で描ききれず理解できないだけの話しなの
だと思います。

さて、そんな緊張感と無我夢中に没頭した時間の中で1つのコンセプトが浮かび
上がりました。「ショート(Short)&ナロー(Narrow)」
つまり、「短くて幅の狭い」クラスCを開発しようと言うことです。


「短い」・・・

 何をもって「短い」とする定義はありませんが、その当時、あるいは今でも
 日本に輸入されている北米製モーターホームのほとんどは全長7メートル前後
 のサイズのものが大半を占めていました。
 そこで、全長6メートル程度のクラスCを考えました。
 そして、先程の「点」ではなく「面」での発想の一例がここに表現されますが、
「フェリー」での移動を考え「6メートル以内」というサイズにこだわりました。
 車検証上の長さの記載によって料金が異なるからです。
 モーターホームでの旅に経験豊富な戸川さんならではの愛情ある発想です。
(※現在では車検証上ではなく実測により全長を判断するフェリー会社が増えて
  います。)
 余談ですが、モーターホームを販売するには「まず洗車から・・・」が戸川さ
 んの教育方針でしたが、次に「モーターホームを使って旅をしなさい・・・」
 という教えのお陰でフェリーの料金体系は肌で感じていました。


「幅の狭い」・・・

 北米製クラスCモーターホームの幅はどれをとっても2.5メートルに限り無
 く近いサイズのものばかりでした。
 コンセプトの段階では2.2メートルから2.3メートルに出来ないか考えまし
 たが、シャシのトレッドの幅から2.36メートルが限界であることがわかり
 一般的なサイズより14センチ縮めることになりました。
 実際に乗り慣れてしまえば大差はないように思える「14センチ」ですが、多
 少でも幅が狭いことは、特にそれまで「こんな大きな車は乗れない」と見た目
 の印象だけでクラスCを断念したり遠巻きに眺めていたて方々に「再チャレン
 ジ」の機会を作れたように思います。
 恐る恐る試乗運転にチャレンジして「乗れる!」と確信していただき、それま
 で、想像だけの印象から断念していた快適な居住空間を得ることができたオー
 ナーの方々がたくさんいらっしゃいます。

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